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今回は、業務上疾病についてです。
業務上疾病について、最高裁(支店長付きの運転手として自動車運転の業務に従事していた者が走行中にくも膜下出血を発症した事案)は、以下のとおり判断しました。
以上説示した上告人の基礎疾患の内容、程度、上告人が本件くも膜下出血発症前に従事していた業務の内容、態様、遂行状況等に加えて、脳動脈りゅうの血管病変は慢性の高血圧症、動脈硬化により増悪するものと考えられており、慢性の疲労や過度のストレスの持続が慢性の高血圧症、動脈硬化の原因の一つとなり得るものであることを併せ考えれば、上告人の右基礎疾患が右発症当時その自然の経過によって一過性の血圧上昇があれば直ちに破裂を来す程度にまで増悪していたとみることは困難というべきであり、他に確たる増悪要因を見いだせない本件においては、上告人が右発症前に従事した業務による過重な精神的、身体的負荷が上告人の右基礎疾患をその自然の経過を超えて増悪させ、右発症に至ったものとみるのが相当であって、その間に相当因果関係の存在を肯定することができる。したがって、上告人の発症した本件くも膜下出血は労働基準法施行規則三五条、別表第一の二第九号にいう「その他業務に起因することの明らかな疾病」に該当するというべきである。
労災保険法に基づく保険給付の対象となる「業務上の災害」には、非事故性の疾病も含まれています。しかし、非事故性の疾病は、事故に遭遇せずに発症すること、疾病発病にはさまざまな要因がありうることから、業務起因性の判断が難しいのが現状です。そこで、労働基準法やその規則により、対象となる職業病がリスト化されており、列挙されていない疾病は、「その他業務に起因することの明らかな疾病」(労基規則別表1の2第9号)も支給対象とされており、上記判例は、当該疾病がこれに該当するかが争われましたものです。
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