2009年2月18日水曜日

残業代の請求

当ブログでは、時間外勤務について触れている裁判例を紹介しています(つづき)。

二 争点二について
1 被告の主張
(一)平成八年六月二一日及び同年一〇月二一日、就業規則は改正されたが、これにより労働者の労働条件は従来に比べ向上しており、その変更には合理性がある。
(二)労働時間について
 改正前と改正後における、一日あたりの拘束時間数、労働時間数、一か月あたりの拘束時間数、労働時間数及び所定労働時間数のすべてが就業規則の改正により向上している。

(三)賃金について
 一か月四〇万円の水揚げがあった場合を具体例として、改正前後の賃金額を計算すると、一週間の所定労働時間を四四時間と短縮したことに伴う平成八年六月二一日付け改正後、オール歩合給に変更されたが、別紙五(〈証拠略〉)のとおり、労働者の賃金は改正前とほぼ同水準である。一週間の所定労働時間を四〇時問に短縮したことに伴う平成八年一〇月二一日付け改正後の賃金も同様である。
 また、平成八年六月二一日改正前の賃金比率は段階的比率になっていたのに対し、改正後はこれをやめて歩合給率を一律に日勤四八・七パーセント、隔日勤務四六・二七パーセントとし、割増賃金(残業代)については、労働基準法にのっとり時間外、法定休日、法定外休日、深夜にわけて規定している。なお、割増賃金(残業代)の実際の支給計算方法については、一か月平均の超過勤務(残業)時間を算出のうえ、前記争いのない事実等八記載のとおり、計算して支給する旨二組合(徳島南海タクシー労働組合、徳島南海労働組合)と労使協定を結び実施した。
 さらに、一週間の所定労働時間が四〇時間以内となったことに伴う平成八年一〇月二一日改正後は、月間営業収入に対する歩合給率を日勤四七・八八パーセント、隔日勤務四五・三七パーセントとし、その代わりに、超過勤務(残業)時間が事実上増えることにかんがみ、一か月平均の超過勤務(残業)時間を算出のうえ、前記争いのない事実等九記載のとおり、計算して支給する旨前記二組合と労使協定を結び実施した。
 よって、賃金規定の改正内容にも合理性がある。
(四)手続について
 いずれの改正時にも、全自交徳島南海タクシー労働組合及び徳島南海労働組合との間では団体交渉のうえ協定書を締結した。また、組合に加入していない従業員にも説明のうえ納得を得ており、平成八年六月二〇日時点で七〇名の従業員のうち、四八名(六八・五パーセント、三分の二以上)の同意を得ており、平成八年一〇月時点でも六九名の従業員のうち四七名(六七・一パーセント、三分の二以上)の同意を得ている。
 原告らが所属する全国一般労組との間では、平成七年一〇月二四日から平成八年五月二七日まで一二回の協議の場を持った。
 改正後の就業規則は、いずれも労働者代表の同意を得て、徳島労働基準監督署に提出済みである。
2 原告らの主張
(一)今回の就業規則の変更は、第一次判決の趣旨に反して、給与体系を歩合制とした上で、時間外手当(残業代)を従来の歩合給五二パーセントに含ませるために、歩合率を引き下げたものである。よって、労働者にとって、明らかに不利益なものである。
 被告は労働条件は向上していると主張するが、向上したか否かを比較する対象が誤っている。被告が向上しているというその比較対象たる改正前の割増賃金(残業代)については、先行する第一次判決をもとに比較すべきである。そうであれば、超過勤務(残業)(ママ)ある場合には従前の方が従業員にとって収入がよく、就業規則の改正によって減収となったことは明らかであり、大幅な不利益変更である。実際問題として、被告会社は繰り返し「赤字」を理由に従業員に労働条件の切り下げを求めているのであり、被告会社が進んで従業員の給与が向上するように就業規則を変更することは考えられない。したがって、不利益変更であることは明らかである。
(二)不利益変更は原則として許されないのであり、それが有効とされるのは例外である。
 本件をみてみるに、実質的に従業員の不利益の度合は大きく、これが認められれば本件請求が認められなくなるのである。一方、被告会社がいう「赤字」についての、労働者に対する具体的説明はこれまで全くなく、不利益変更を合理化するものではない。
 次に、鳴門営業所においては固有の就業規則が作られておらず、違法である上、一〇月の規則変更については、従業員に全く周知されていない。変更にあたって意見聴取をおこなった人物は、法廷で最低賃金以下でも働くことを認めると述べるなど、およそ労働者の代表とは言えない。変更につき、原告らの所属する組合の支持を得ていないのはもちろんのこと、別組合の者にしても真の支持は得ておらず、それ故に、脱退が生じているのである。
 このように、変更については、手続的にみても合理性を有していないのである。

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